カンボジア事務所長 安田所長
 カンボジアで一番暑いとされる4月が終わり、ホッとする間もなく今度は雨季を迎えています。雨季の間は毎日のように夕方になると雨が降り、これが11月頃まで続きます。村の生活においては、村を取り囲むようにできる池(?)で魚やカニなどが捕りやすくなるという利点もあるのですが、昨年の洪水のことを思うと気が気でないというのが私の本音です。     
 今年は無事に雨季を終えてくれるといいのですが・・・・





 さて、2年目に入った未来学校ですが、昨年の経験を元によりよいプログラムをつくるため、先生たちとの話し合いやデータの検討などを進めています。
 先生たちとの会議では今年の改善策として、教科書やその他教材の効率的な活用方法、どのように公立小学校への編入を促進するかが話し合われました。特に初級クラスにおいて、いかに効率的な学習を行い、また学ぶことの楽しさを理解させるかという点に多くの議論が割かれています。また、今後は、それぞれのクラスにおいて月ごとにシラバス(授業計画)を作成し、授業目的の明確化を図り、月の終わりにはその達成度についても評価をしていくことになり、早速実践しています。

 データの検討ですが、昨年度の集計を見てみますと、2003年4月の開校から2004年3月31日までの間に、合計251名の子どもたちが未来学校の授業に参加したことが分かります。このうち、134名が未来学校に在籍(4月現在)、分かっているものだけで20名がルセイサン小学校へ編入しています。残りの97名に関しては、引越しや他団体の識字学校への転出といったケースと考えられますが、それだけでなく、どの学校にも通わない不登校というケースもあるようです。特に、初級クラスでの生徒の出入りが激しいようで、上のクラスにあがる前に辞めてしまうというケースが多くあるという結果が出ています。元々、未就学児童が非常に多い村ではありますが、未来学校が開校した後でも、様々な社会問題によって安定して学校へ通えない子どもたちが多くいることを示しており、この点は今後の大きな課題になっていくと考えています。
できるだけ長い期間の教育を受けることは大切な目的ですが、それぞれの子どもにはそれぞれを取り囲む環境がありますので、私たちがつくるプログラムに子どもを合わせるのではなく、私たちが子どもの状況を理解し、それに合わせていくという部分も大切だと考えています。




 6月18日現在、在籍児童数は127名となっています。5月に3度目のクラス替えが行われ、上のクラスが最後の1冊である4冊目の教科書に進むことになりました。

これまで1冊目の教科書をじっくりと学んできた下の3クラスからは、2冊目の教科書に進級する子どもたちの選抜が行われ、この結果26名の子どもたちが2冊目のクラスへと進むこととなりました。
この結果、4冊目のクラスが2つ、2冊目のクラスが1つ、1冊目のクラスが2つというクラス編成になっています。

「開校から一年以上にもなるのに、まだ初級クラスが2つあるの?」という疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、これには上にも述べましたように、児童の出入りが多いという問題があり、必ずしも同じ子どもたちが同じことを学んでいる訳ではありません。できるだけ門戸を広げ、出来るだけ多くの子どもに少しでも教育の機会をあたえるという観点から致し方ない状況だと考えています。

その1冊目の教科書を学ぶ初級クラスですが、ここでは、子どもたちが学習の基礎となる文字や数字をじっくりと学ぶことに焦点が置かれています。この教科書自体は文字と単語、短文の学習のみで、数字の学習は入っていませんが、実際子どもたちの中には、数字を知っているだけでなく簡単な計算ができる子どもが数多くいることから、足し算や引き算などの簡単な算数の学習も行われています。これは、親の手伝いなどで買い物に行ったり、小さな店の店番をする子どもたちがいるためで、中には、日本の同世代の子どもより算数が得意な子どももいるのではないかと思うほどです。

2冊目の教科書では、クメール語の分野では短文から文章へ、計算もより高度なものへと発展していきます。この教科書、そして3冊目、4冊目で扱われる文章の題材には、保健衛生や環境保護などに関わるものが多くあり、同時に理科や社会科の勉強もできるようになっていますが、大人にも使えるように編まれているため、どうしても子どもには理解しにくい内容も含まれています。
ここが先生の腕の見せ所ではありますが、これを補うためにも、おどき話や昔話の副読本を活用して、バランスのとれた学習を目指しています。








最後となる4冊目のクラスでは、これまでの学習の復習やまとめだけでなく、小学校への編入の促進も大きな目的の1つになってきます。これまでも編入先となるルセイサン小学校職員とも意見交換を行い、編入がスムーズに行えるような授業づくりをかりと身につけさせるだけでなく、勉強の楽しさと大切さを一緒に考えるということも大切な課題だと考えています。

また、このクラスでは、単に教科書に書かれていることを学ぶというのではなく、それらを生かしながら、作文や絵画など自己表現の場をどんどん増やしていきたいと思っています。言われたことを覚えるという受身型の学習から、発信型の学習へと発展させていければと思っています。

カンボジアの小学校では年度末を迎えています。9月の新学期には、どれくらいの子どもたちが4冊目の教科書を終えることができるのか、また小学校へ編入することができるのか、楽しみ半分不安半分ですが、できるだけよい結果が導き出せるように今から先生方やルセイサン小学校職員とも協力しながら準備を進めたいと考えています。





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